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ロシアの汚職-ビジネス側の視点

 

 ロイター通信の最近のインタビューでドミトリー・メドヴェージェフ新大統領はロシアの2つの重大な問題「貧困」と「汚職」を取り上げた。特にメドヴェージェフは国家官庁を麻痺させる「汚職」について、このような種類の脅威には組織的な対応のみが対処可能だと強調し、現在、メドヴェージェフの一任で、ロシア連邦政府は汚職対策国家計画を基に作業を行っている。

 しかし、ロシアにおける企業調査の結果は、汚職の状況がそれほど画一的でないことを証明している。2007年アメリカ・コロンビア大学のティモシー・フライ高等経済大学院が行った、ヨーロッパロシアの8つの地域における500の企業へアンケート調査は次のことを示した。2000年に行った調査と比べて、汚職に対する評価は悪化した。しかしこれは国家の効率性評価の全般的悪化を背景にして起こった。

 もし、ロシアにおけるビジネス上のトラブルや問題点と汚職を比較すると、産業部門では汚職はあまり重要な要因でないことが判明した。2000年では、ビジネス発展における10の主要な障害となる要因の7番目で、2007年では、13の主要な問題の13番目であった。サービス産業の企業にとって、汚職は中位の重要性をもつ要因に属される。(2000年では5番目で、アンケートに含まれた要因の数が増えたにもかかわらず、2007年も5番目)。その際、産業部門では小企業(労働者が200人まで)は汚職問題を非常に強く感じており、サービス産業の中小企業(労働者が150人までの規模)も同様である。サービス産業でこの二つのグループに入る企業にとって、汚職はビジネス発展の制限要因総ランキングで3、4番目に位置する。

 同様のデータはEconomist Intelligence Unitの分析概観の一つに載っている。ロシアで活動している大手・中堅の国際投資家との定期的な交渉をもとに、Economist Intelligence Unitの専門家はロシアの地方における汚職が「管理される」ようになっていると指摘している。そのために、ロシアで投資計画を成功裏に実現するために、地域と地方の官僚との定期的な交渉がかなり重要となる。Economist Intelligence Unitの概観で、いかなる賄賂もなしに開始され、税的特権まで提供された具体的プロジェクトの例が載っている。しかし、プロジェクトは地域にとって必要であり、得であることを企業幹部が地域官僚に納得させるために、数ヶ月、彼らとの作業が必要となった。同時にEconomist Intelligence Unitの専門家は別の例を引用している。プロジェクトの実現で重大な障害の一つは、汚職ではなく、土地提供、初めて設立した企業の水道、輸送、電気、下水網の接続に対応する官僚が十分な知識を持っていないことである。

 このような結論は多くの企業調査の結果と全般的に合致している。企業調査はロシアで行われ、最近の10年間で民間部門における著しいマネージメント力の向上を証明している。しかし、国家管理システムや公共部門では同様の結果が見られなかった。現在、ロシア経済発展の展望とロシアでのビジネス運営の視点からみると、民間部門と国家管理の質の間にある乖離は大きな問題の一つである。

 ロシアはこの問題を解決できるのであろうか?近年ロシアは1960~80年代に韓国や幾つかの東南アジア諸国が経験した国家資本主義の道を確実に歩んでいる。私の見解では、「汚職」はロシアや中国、カザフスタン、アゼルバイジャン、その他の国々など、国家主導で積極的に経済活動に関与する国家に特徴的な現象と考えている。

 しかし、国家資本主義モデルには発展や効率性向上に対し独自の促進策があり、「汚職」はその功罪であると、述べられている。例えば、まだ1990年代の初めにカリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)のYingyi Qian教授とGérard Roland教授は、中国の経済的成功を説明する一連の興味深い研究を発表した。特に、経済の過渡期で厳しい予算制限がある場合、地方は資源を引き込む競争をし始め、この競争が国家管理の品質向上を助長すると、モデルで示された。1980-1990年代の中国における地方官僚の出世は、彼らが指導した地域の経済的成長と緊密に関係していると、最近の実験調査は証明している。

 カザフスタン(ロシアと同様に「氏族」資本主義の例と頻繁に呼ばれる)ではすでに1990年代から、優秀な海外の大学やビジネススクールでの教育を含めた、国家官僚技能向上プログラムが開始された。現在、それぞれの省庁には、最低でも副大臣の一人はМВА や PhDの称号を持っている。このことは、言うまでもなく、国家管理の質を反映している。

 ロシアでは、現在、同様のプロセスが起きている。しかしむしろ、地方や地域レベルで、特に市長の地位で、概して、ビジネス業界での仕事経験をもつ地域指導者(クラスノヤルスク、ペルミ、トヴェーリなど)が新しいモデルを持ち込んだ。私の見解では、連邦レベルにおいて、汚職対策に対する強調は別の、おそらく、さらにより深い問題-官僚の専門性の低さや国家機関の非効率性-を目立たなくする。現在、残念ながら、投資家によってこの問題を解決しなければならない。彼らは、官僚との説明作業に多くの時間を費やし、そして、専門性の欠けた国家介入のリスクから自分を守るため、プロジェクト実行に対する現存の行動管理に多くの時間を費やすだろう。

 



バックナンバー

第4回 ロシアの法組織はどのように機能しているか?

第3回 21世紀の発展制度か、それとも過ぎ去った20世紀の産業政策か?

第2回 ロシアの企業は競争力があるのか?

第1回 ロシアの汚職-ビジネス側の視点


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アンドレイ・ヤコブレフ

 

経済学者。モスクワ大学の経済学部で市場経済研究の責任者を務める。1992年、ロモノソフ大学で経済学と統計学で博士号を取得。日本では一橋大学、京都大学の主催するワークショップ会議に多数参加。専攻は、ロシアのコーポレートガバナンス、産業政策と国営企業関係の比較研究。ロシア政府の経済コンサルタントとしても従事。2005~2007年、ロシア製造工業における投資評価と競争力における、世界銀行との共同プロジェクトについて、ロシアチームのリーダーを務める。ロシアマネジメントジャーナル及びHSE 経済ジャーナルの編集委員。2006年以降、ヨーロッパ協会における比較経済研究の重役委員を兼務。Europe-Asia Studies, Post-Communist Economiesなど多くの国際ジャーナルに寄稿。

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