Featureクローズアップ!モスクワ

世界的な日本食ブームと言われているが

 

 

part3.1.jpg世界的に日本食ブームと言われているが、ロシアも90年後半頃より、寿司が非常に広く普及していった。あちこちにロシア語で書かれている看板は「すし」でなく「すしぃ」と書かれている。それは、すし食文化が日本から直接入ってきたのでなく、外国から入ってきたため、英語のSUSHIから訳されたのが、そのまま定着していったためである。 
part3.2.jpg ソ連邦時代には、日本食レストランはたった1件のみで、値段が高いにもかかわらず予約も取りにくく、主に日本人駐在員が会社の接待に利用していたのである。

それが、いまや寿司という名のお店は、300~400店あるといわれている。これ以外にもイタリア、フランス、スペイン、中国などの無名、有名なレストラン、それらほとんどのところに寿司メニューがおいてあり、それを入れると、500~600店位になる増え方である。
 ロシア連邦になり、イタリアやフランスのレストランが開店し始めると、日本レストランも開店しはじめた。そのころの日本食レストランの寿司は、握り寿司がメインで、「ネタはどこから?日本から?とか、寿司メシはどこのお米?牡丹米?」とか、「お店のオーナーは誰?え!日本人なの?」とか、また、レストランには、寿司カウンターがあったりで、日本のどこでも見られるようなつくりだった。とうとう伝統的な日本食店が出てきたかと我々はよろこんだ。メニューも焼き魚あり、おでんあり、揚げだし豆腐ありだった。
 当初、寿司などは、1カン、10ドルくらいでとても高いものだったが、ロシア人にとって、日本食はエキゾチックな食べ物で、デリカテッセン(高級なめずらしい食べ物)で、誰もが行けるところではなかったが、「私、昨日、日本レストランにいったのよ」と、言うことは、ステータスがあり、自慢できることだった。

part3.3.jpg しかし、これも、ロシア人の金持ち―新興財閥が多く出てきたころから、すべての業種が、大きく飛躍しはじめ、飲食業も含めて、すごい速さでロシアは、変わっていった。
 今やロシアは、いろいろな国のレストランが氾濫し、焼き鳥や、寿司やなども、どんどんチェーン店化し、拡張されていった。
 日本のように、寿司職人がいて、いいネタを使い、繊細な味付けで、握ってくれる寿司などでなく(残念だが)、ロールすし(1人前、ロールすし―平均250ルーブル=10ドル)などの創作すしが中心になっていった。
 今やどこにでもあるメニューは、ロールすしで、マヨネーズ、トマトケチャプ、キムチ、マンゴー、などを使い、派手派手な、奇想天外なロールすしが店独自のスペシャルとしてよく出てくるようになった。
 先日、ロシア人に人気のあるレストランにロシア人と寿司を食べに行った。とても洒落た感じのレストランでお昼時だったがお客も入っていた。ガラス張りの3階で、真ん中にプールがあるところへ、一番人気のある場所だということで通された。すしは創作されたもので、「やくざ」という名の超唐カレー粉でまぶした天ぷらやアボガドにマヨネーズであじをつけ、赤い色のトビコで巻いたもの、「悪魔」-焼いた豚肉と果物のなしと辛いチリパスタいりを黒いトビコで巻いたもの、「クレージーモンキー」-サーモンの焼き魚とマンゴとチーズをオレンジ色のトビコで巻いたものに,甘いマンゴソースをかけたものなど、とてもきれいな色で飾ってあるロール巻きすしがでてきた。食べておいしいということの前に、見てきれいにアレンジされていると感じるものだった。まわりのお客は楽しそうに、注文していた。(1皿600ルーブル=24ドル)。
 目新しさや、他店にないもので、オリジナルメニューを作るのに、ロシアのすしシェフたちは、アイデアをしぼっているのかもしれないが、もうすこし、寿司には、お米の品種、酢やわさび、ガリ、ノリなどが、大変重要な役割を果たす食材だということを、わかってもらうべきだと思いながら、ウエイターに説明した。が、うちのオリジナルロールは、人気があり注文も多いのでと言われてしまい、食べたことのない、マンゴーで作られたオリジナルすしを、注文することになった。私にとっては、酢めしでもなく、わさびもなく、甘い味付けは、ケーキみたいだなとおもった。

part3.4.jpg いろいろなスーパーマーケットにも、ロールすし「アラスカ」(サーモンとチーズをまいている)(1パック420ルーブル=16ドル)のような、その店のアイデアで,名づけられているロールすしがあちこちで売られている。気をつけてみると、われわれのなじみの酢めしでなく、またほとんどがのりで巻いてなく、トビコ、をつかっているのが多いようだ。
 今や、ピザやさんでロール巻きすしを食べたり、焼き鳥やさんでロール巻きすしを食べたりと、気楽に若者が集まってくる所では、ロシア風ロール巻きすしは、ビールと同じように、値段も手ごろだということで人気があるようだ。
 我々が、食べ慣れている巻き寿司、(酢めしで、わさびがあるべきだと思う)、かっぱ巻き、鉄火巻きなどは、ここでは主流にはなれないようだ。

 今年の秋は、ロシア市場に日本食の売り込みのために、食材会社関係(酒,醤油、酢,のり、お茶、カレー、果物、など)の担当者が、展示会や即売会に積極的に参加しているのが目立った。日本大使館の恒例の秋の文化行事―日本の秋―のプログラムにも、いつもより、多くの日本の食料品展示の案内が紹介されている。
 また日本の農林水産省と大使館から、モスクワにおけるJRO支部設立(NPO法人日本食レストラン海外普及推進機構)の説明会も開かれた。

part3.5.jpg 彼らの活動は今後、引き続き調査をするということで、日本から来た農林水産省外食産業室長や大使館の窓口になっている経済班の担当者からは、将来のきちんとした展望についての話は、なかったとのことだった。その時、いくつか、具体的に出た説明のなかで、半年の期間限定で、日本食を売るお店の紹介があったということで、出かけて行ってみた。
いろいろある品物のなかで、「おいしい、おいしい」と日本語で書かれた紙がぶらさがっている日本の果物をみてきたが、本当に、きれいで、おいしそうだった。
 ただ、値段がほかの国のもと比較して、どれも高く、ぶどうはひと箱1万数千円になり、なしや桃の場合は個が5000円くらいになるとのこと。当然私たちは見るだけにした。
 店員さんの話では、ロシア人で買っていく人はいるが、あまり売れていないようだった。
 ここのスーパーにも、すしは創作寿司のロールすしが置いてあった。

 

バックナンバー

第3回 世界的な日本食ブームと言われているが

第2回 日本の武士道をロシア人は理解できるか?

第1回 モスクワでの日本関係美術展覧会情報

 


遠藤 紀子(えんどう・のりこ)

 

1966年、全ソ対外文化連絡協会からの招待により、日本青年代表団の一人として初めて訪露。その後、モスクワ大学文学部大学院に在籍、修了。1980年代に開設されたモスクワセゾン駐在事務所初代所長に就任。日ソ文化交流に注力し、その実績はソビエト現代美術展、モスクワコンテンポラリーアート展、ボリショイバレー学校日本支部(ソビエト バレエ インステイツート)開設、リヒテルの生誕84周年記念コンサートなど多数。現在は株式会社SAVVINSKAYA-SEIYO(サービンスカヤ西洋)社長。サービンスカヤ西洋では、ロシア初の100%海外資本(日本資本)によるオフィスビル「Japan House」を手掛けた。


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