Feature「ロシアに想う...」

第1回 ロシアを初めて訪ねて

 

 モスクワ大学は1755年に設立され、250年以上の歴史を有している。この長い歴史の中で、昨年エグゼクティブMBAのコースが立ち上がった。経営者や国のリーダーを専門的に育成するコースが誕生した背景には、BRICSの一翼を担うロシアにとって、時代的にこうした教育が急務なのだろう。その最初の講義を、光栄にも私が担当した。講義内容は、かねがね私が主張している「支援を機軸としたマネジメントの合理性」*)であった。

 講義の内容については、次回以降に譲るとして、初めてVIPとしてロシアに迎えられ、その街を歩き、空気を吸い、そして触れ合った人々から感じたことを紹介したい。

 第一に、モスクワの人々の第一印象は、「ちょっと自信のないエリートである」。ヨーロッパ社会からも完全に受け入れられているわけではないし、東側の中国とも胸襟を開く間柄ではない。誇りは高いが、そして文化もあるが、どこか自信がないと感じられる。だが、このことは、私たちから見ると、この両サイドから彼らを受け入れ、支えていけば、ロシアが世界の平和にとって大きな役割を演じる力になるのではないかと私には思えた。

 二つ目は、インフラについてである。実は、日本からロシアに行く時、うっかり髭剃りを忘れてしまった。講義の日の朝、そのことに気づき、「どうしよう」ということになった。同行してくださった、TMUコンサルティングのスタッフの方が、我がことのように、スーパーやコンビニ、個人商店、病院を回ってくれるだが、私の欲しいレーザー型の目的物が見当たらない。特に驚いたことは、道路は広く、道路の反対側のお店に行くのに、3kmくらい信号がないため、大回りして辿り着き、また大回りして帰ってこなくてはならなかった。5軒目か6軒目で比較的ハイカラなお店でやっと見つけ、事なきを得た。日本では考えられない経験である。だが、これも別の視点から捉えると、非常に大きなビジネスチャンスが眠っているということだと思う。

 TMUコンサルティングの方から教えてもらったのであるが、ロシアの若人は、プーシキン氏の銅像に花を手向け、その前で彼の詩を、心から朗々と謡うのだそうである。今、BRICSの国々は、物質的に豊かになることを求め急速に浮上し始めた。けれども日本がかつてそうであったように、その国の大切なものと物質的豊かさを交換して欲しくない。かのロシアの若人の情熱が、文化や伝統を保持しながら爆発し、世界の他の国々と手を携えて繁栄しあっていってくれることを願う。そのために、日露の架け橋として、TMUのプロフェッショナリズムに期待する一人である。次回は、MBAの講義についてふれたい。

 

*)詳しくは、『利他性の経済学』新曜社を参照されたい。

http://tateoka.shienken.org/book.html

 


 

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舘岡康雄(たておか・やすお)

 

79年東京大学工学部卒。日産自動社中央研究所、研究開発部門、生産技術部門、購買部門、品質保証部門を経て、人事部門ではNW(日産ウェイ)の確立と伝承を推進し、現職は静岡大学大学院教授、MOT担当。2002年度経営情報学会論文賞受賞。主な著書に『利他性の経済学-支援が必然となる時代へ』新曜社(2006)。博士(学術)。早稲田大学客員研究員、ビジネス・ブレークスルー大学院大学客員研究員、経営情報学会理事、ABEST21(専門職大学院認証評価機関)専門審査委員、日本委員会委員兼務、支援研究会主宰。

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