Feature「ロシアに想う...」

第2回 ワークショップ式授業について①

 

 さて、髭剃り事件?に関して事なきを得て、いよいよエグゼクティブMBAで講義である。実は、よく日本でもエグゼクティブMBAで講義をすることがあるが、大抵20名前後の学生である。今回も、17,8名かと当初思っていた。けれども、80名だと言う。企業のエグゼクティブに加え、通常のMBAの学生も全員参加するのだ。
 私は日本を出発する前に、この講義に関して二つのことを行いたいと思っていた。
 第一に、ロシアではあまり行われていない教育方法の導入である。先生が教壇から一方向的に知識を伝授するのではなく、小さなグループを作ってもらい、私の話と彼らの議論とが双方向に絡み合い、新しい何かを生み出す授業設計を考えていたのである。このような教育方法の背景には、自ら手や頭を動かして、自ら「気づか」ないと*)、自己変容(学習)は起きないという思想がある。学習は与えられるのではなく、自らが構成するものだという考えである。このような教育方法はロシアではあまり行われていないもので、ロシアの最高学府のしかも経営のエリートたちにどのように受け入れられるのか、はたまた受け入れられないのか、大変興味があったのである。大教授から知識や経験を伝授されることをよしとする教育になれている人々の反応はいかに?である。

moscow02-photo1.jpgのサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像 第二に、日産が高い業績(結果)を出しているから、その話しを聞いてもよいとか、日産がロシア進出をするから、そのビジネスチャンスとして、私の話を聴くというのは、意にそうものではない。むしろ、経営活動や経済活動の「結果」の背後にある「プロセス」に焦点を当てた学びを提供したかった。つまり、「管理」ではなく、互いに互いの力を引き出しあいながら、すなわち相手を「支援」することによって、高いパフォーマンスが導き出されることを伝えたかったのである。つまり、私の支援研究の紹介である。
 TMUコンサルティングのスタッフが朝、ホテルで私を時間通りピックアップしてくれた。車は、雀が丘(旧レーニン丘)にある有名なモスクワ大学新校舎を目指さず、モスクワの中心、環状線内にあるMBA専用校舎に向かっている。これは、忙しいビジネスマンの社会人学習者に配慮するもので、日本でもよくあることである。車中、私は、
 「20数名を目標にデザインしてきたワークショップ形式の講義が、80名程度の人にどのように行えばよいのだろうか」
 「今回は、支援の話しを議論するのであるから、直接英語では行わないが、通訳の方は、私の思想の深い微妙な部分を訳せるのだろうか」など、考えていた。
 こうした中、車の中ではTMUスタッフの方が、移りゆく景色にしきりに案内をいれている。チョコレート色をした、最初のチョコレート工場のことや、文化、性向、歴史などコメントは適切だ。落ち着いた気持ちで会場入りすることができた。
 講義は意外な方向に進み、実に刺激的な結果となった。それについては、次回詳しく報告したい。続く...。

 

*)1詳しくは、拙著『気づく能力』静岡学術出版社(2007年)を参照されたい。

 


 

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舘岡康雄(たておか・やすお)

 

79年東京大学工学部卒。日産自動社中央研究所、研究開発部門、生産技術部門、購買部門、品質保証部門を経て、人事部門ではNW(日産ウェイ)の確立と伝承を推進し、現職は静岡大学大学院教授、MOT担当。2002年度経営情報学会論文賞受賞。主な著書に『利他性の経済学-支援が必然となる時代へ』新曜社(2006)。博士(学術)。早稲田大学客員研究員、ビジネス・ブレークスルー大学院大学客員研究員、経営情報学会理事、ABEST21(専門職大学院認証評価機関)専門審査委員、日本委員会委員兼務、支援研究会主宰。

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