Feature「ロシアに想う...」

第3回 学びが継続する授業とは...

 

 ビハンスキー先生から私の紹介があり、いよいよ授業が始まった。彼は、「舘岡博士は支援研究という珍しい、しかし、普遍的な領域を研究しており、その成果をお聴きするのを楽しみにしている」と紹介してくれた。
 私はできるだけ双方向に話を進めていった。「支援」と聞いて、あなたは何を最初に思い浮かべるのか?マネジメントといえば、テイラーの科学的管理から出発して「管理」概念が花盛りであったが、パラダイム(リアリティ)が変化し、違いと変化が当たり前となっているグローバルな時代の物事の処理には、管理はむしろ破綻し、「支援」概念が台頭してくることを述べた。
 昔、違いが少なく変化があまり起こらない時代には、「こうすればこうなる」ことがある時間幅で担保されるから、計画をたて、それを部下に実行させ、ちゃんと実行しているか、期待通りの成果がでているか「管理」が必要だったのである。だから、当時は計画を中心にすえて、「させる・させられる」を上司と部下は交換していた。けれども、変化がはやく違いが大きくなると、しかもそれらが時間とともにどんどん変わるようになると、計画を作っても、それが承認されて取り締まり室をでるときには、もう市場が変わっている。だから管理すればするほど矛盾が極大化していく。かわって、変化に合わせ、相手に配慮する「支援」が必要になってくるのだ。ここでは支援者と被支援者は「してもらう・してあげる」を交換している。私の提唱するSHIENは「従来重なりがなかったところに重なりを創り、その重なりでしてもらう・してあげることを交換すること」である。

moscow03-photo1.jpg このような内容を、学生にお題を出してはまず一人で考えてもらい、次に二人一組になって内容を紹介し話しあう。そして、発表してもらう。これを何度も繰り返したのである。最初指名した、美人のMBAの学生は慣れていないようで、恥ずかしがり発表を辞退した。けれども、授業の後半では、自分から何度も発言し、質問をしてきた。ビハンスキー先生も彼女の変わり様を大変喜んでいた。
 このように学びが個人の中で継続し、しかも教室の中で連鎖するためには知識(結果)を上から流し込むやり方では駄目で自ら手や足や頭を働かせて、しかも周囲の人とそのプロセスを共有することが必須である。結果の学びではなく、こうしたプロセスを共有することが大事なのである。よくあるグローバル化の対応も同じである。昔は情報を早く知って出し抜くこと(よいポジッションを取る)が大事であった。そして、今も駐在員を派遣したり、駐在員経験のある人の知識を大事にしたり、こうしたTMUのような機関をそのようなやり方で役立てようとする。ロシアではこうするものだ、ロシア人はこうすると喜ぶとか、そうしたロシアに関する相手の知らない情報を知れば、ビジネスを有利に導くことができると考える立場である。
 グローバル化が進んだ現在、本当に大切なことは、いろいろな知識を知ってロシア人に合わせることではなく、ロシア人と一緒になって、新たな情報を生み出せる力なのである。知識人や経験者が語る切り売りできるような静的な知識ではなく、互いを支援しあえるような動的な知恵が必要なことを指摘しておく。TMUはそうした共有知を大事にしているところに私は共感する一人である。 

 

 

 


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第3回 学びが継続する授業とは...

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第1回 ロシアを初めて訪ねて

 

 

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舘岡康雄(たておか・やすお)

 

79年東京大学工学部卒。日産自動社中央研究所、研究開発部門、生産技術部門、購買部門、品質保証部門を経て、人事部門ではNW(日産ウェイ)の確立と伝承を推進し、現職は静岡大学大学院教授、MOT担当。2002年度経営情報学会論文賞受賞。主な著書に『利他性の経済学-支援が必然となる時代へ』新曜社(2006)。博士(学術)。早稲田大学客員研究員、ビジネス・ブレークスルー大学院大学客員研究員、経営情報学会理事、ABEST21(専門職大学院認証評価機関)専門審査委員、日本委員会委員兼務、支援研究会主宰。

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