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第4回 モスクワで一番有名な犬-革命広場駅(プローシャチ・レヴォリューツィ駅)
3号線のちょうど真ん中にある革命広場駅は、赤の広場やクレムリン、また少し歩けば劇場街に近く、モスクワを訪れた人が必ず通過する駅の一つだろう。駅の構造は、中央からプラットホームへ続く通路に茶色の大理石の低いアーチを配し、それを左右でブロンズ像が支える形になっている。 駅ができたのは1933年、ちょうど大戦が始まる直前である。アーチを支える74体の等身大のブロンズ像たちは立て膝を付いていて、防空壕の中にでも閉じこめられたような窮屈な印象を受ける。銃を構える兵士、赤子を抱きかかえる若い母親、鶏の世話をする女性、掘削機を抱えた労働者、歯車を手に書類に目を落とす男性技士等々、祖国防衛、戦意高揚のために作られた様々な労働者像の表情は、社会主義リアリズムとでも言うのか、端正ではあるが魅力に乏しい。なかには、不気味に短銃を手に身構える狙撃者のような像もある。エトランゼから見れば、時代錯誤であれ、暗い時を思いださせるものであれ、物珍しくフォトジェニックに感じられるのだが、モスクワの人にはどうもあまり評判はよくない。
だがここには、モスクワで一番有名な犬たちがいる。兵士の傍らで身構えるこの犬たちの鼻を触っていく人が後を絶たない。おかげで鼻だけが光り輝いている。
「名前はないの?」とモスクワの人に聞いたら、 「名前はないと思うけど、幸運がありますようにとみんな触るのよね」とのことだ。
革命は遠くなった。しかし、革命広場駅の労働者たちは明日来るかもしれない戦争を前に、今でも祖国防衛に備えている。モスクワっ子たちは、そういう革命的人間像を毎日横目で見ながら、せめて犬たちに愛着を示すことで、陰鬱なこの時空と祖国の過去をやり過ごしているのかもしれない。
この話を居候のターニャにしたら、 「狙撃手のピストルにだってみんな触っていくのよ。人間のただの癖よ、出っ張ったものに触りたいっていう。」と取り合わなかった。
----------------------------------- 革命広場駅(プローシャチ・レヴォリューツィ駅)は、3号線 アルバーツコ・ポクロフスカヤ線にある。 2号線のチアトラーリナヤ駅、1号線のアホートヌィ・リャト駅と接続している乗換駅。 近くに百貨店グムや赤の広場が、接続するチアトラーリナヤ駅前にはボリショイ劇場、 アホートヌィ・リャト駅前には、マネージ広場がある。文字通りモスクワの中心に位置している。
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