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第5回 ふたつのベラルースカヤ-ベラルースカヤ駅
モスクワにも、東京で言えば上野駅が東北方面への発着駅であったのと同じような、9つのロシア国鉄のバクザール(ターミナル駅)がある。それぞれの駅は地下鉄の駅とつながっているか隣接しているものがほとんどだ。コムソモーリスカヤ駅はレニングラード駅など三つの国鉄の駅と、ベラルースカヤ駅はベラルーシ駅と、キエフスカヤ駅はキエフ駅といった具合だ。
地下鉄環状線ベラルースカヤ駅の天井には、ベラルーシの農民や労働者と兵士たちの様子を描いた12枚のモザイク画が飾られている。モールディングされた白い壁と天井も美しく、照明器具のデザインにも凝っている。床には大理石のタイルがベラルーシのキルト風に敷き詰められている。駅が完成したのは1952年。環状線は何区画かに分けて建設されたが、ベラルースカヤからコムソモーリスカヤまでは、その第二次区画にあたる。この区画の駅舎の設計テーマは、戦後の復興と労働者たちだった。そこには当時権力を握っていたスターリンの強い意志が反映されているという。 こんな逸話が残っている。技術者たちが地下鉄工事の進捗状況を、スターリンに説明しにいった。青写真を見ながらそれを聞いていたスターリンは、黙ってそれを聞き終わると手にしていたコーヒーカップを地図の上に置いてそのまま部屋を出て行った。後で地図を広げてみると、コーヒーカップが付けたシミが残っていた。技術者たちは、モスクワの上に描かれた茶色い円を見て、これこそがモスクワ地下鉄が必要としていた新しい線であると気がつき、スターリンの偉大さに感心したという。それから環状線の建設が始まった。環状線のシンボルカラーが茶色いのもそのせいである、と。ターニャ、この話、知ってた?「残念ながら、知りませんし、私の会社同僚のロシア人も誰ひとりとして知らないと言っています。これは作り話でしょう?」スターリンは遠い過去の人だ。
一方ザモスクヴァレェツカヤ線ベラルースカヤ駅は、全く違う雰囲気を持つ。淡いピンクの大理石の壁と蕾型をしたフロアランプが、シックな雰囲気を醸し出している。照明はかなり暗く、バーにいるみたいだ。アールデコの世界である。開業時は、床にベラルーシ風の文様が陶板ではめ込まれていたそうだ。環状線よりも早い1938年に開業したこの駅舎には、まだその後の「スターリン好み」は見あたらない。
----------------------------------- ベラルースカヤ駅は、環状線とザモスクヴァレェツカヤ線(2号線)にそれぞれある。地上にはロシア国鉄のベラルーシ駅があり、夜行寝台列車は9時間でミンスクへ。若者と老人の三人の銅像は「Белорусские партизаны ベラルーシのパルチザン」と呼ばれている。今でも献花が絶えない。
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